建築士と建築家の違いは？資格・仕事内容・年収までわかりやすく解説

みらいの学び

公開日：2025年12月27日　更新日：2025年12月27日

もしお子さまが建物やものづくりに興味を持っているなら、将来の仕事として「建築に関わる職業」を考えてみてもよいかもしれません。

しかし、建築士・建築家・設計士の違いを、明確に説明できる人はそう多くありません。

名前は聞いたことがあっても、それぞれの役割や仕事内容の違いが分かりにくいと感じている方も多いでしょう。

ここでは、建築士・建築家・設計士それぞれの仕事内容や役割の違いを比較しながら、必要な資格や年収の目安、目指す方法について分かりやすくまとめました。

建築士と建築家の違いは「資格と仕事の役割」

まずは、建築士と建築家の違いについて大まかに知っておきましょう。

建築士・建築家・設計士の違いをわかりやすく紹介

建築士と建築家の大きな違いは、「資格の有無」にあります。

建築士は、国家資格を持つ建築の専門家。
資格には「一級」「二級」「木造建築士」があり、扱える建築物の規模がそれぞれ異なります。
中でも一級建築士は難度が高く、学校や商業施設など、幅広い建築物を手がけることができます。

一方、建築家は「建築の設計や監理を職業とする人」を指す一般的な呼び方で、資格がなくても名乗ること自体は可能です。
ただし実際には、建築士の資格を持ち、デザイン性や意匠性を重視するプロを建築家と呼ぶケースが多い傾向にあります。

また、設計士は国家資格ではなく、企業に所属して設計業務を行う人を指します。
多くの場合、建築士のサポート役を担いますが、建築士法により「100㎡未満の木造住宅」であれば設計できると定められており、小規模な住宅を設計するケースもあります。

資格・仕事内容・役割の比較

建築士と建築家と設計士の違い

建築士と建築家の違いのイメージとしては、建築士は技術面を、建築家はデザイン面を重視すると考えると分かりやすいでしょう。

設計士は、建築士のサポート業務が主体ですが、小規模な木造住宅であれば設計が可能。役割についても大きな違いがあります。

建築士とは？安心して建物をつくるための国家資格

ここでは、建築士の定義や仕事内容などを詳しく見ていきましょう。

建築士の定義（一級建築士・二級建築士・木造建築士）

建築士は、建物の安全性や使いやすさを考えながら、設計・工事監理を行う建築のプロフェッショナル。
国が定める国家資格で、一級、二級、木造の3種類があります。

資格の種類によって、設計できる建物の規模や用途が決められている点が特徴。
一級建築士の資格を取得すると、より大きく複雑な建物を扱えるようになります。

建築士ができる仕事（設計・工事監理）

建築士は、建物づくりの中心となって、設計や工事監理を行う専門職です。
詳しく見ていきましょう。

設計

設計とは、建物を「どんな形にし、どう使えるようにするか」を考え、図面や仕様書にまとめる仕事です。
建物の構造や設備、外観、内装などを決め、工事に必要な設計図や仕様書を作成します。

建築設計は、デザインを決める意匠設計、建物の骨組みを決める構造設計、インフラ（上下水道、電気、ガスなどの設備）を決める設備設計に分けられます。
建物の用途、発注者の希望条件、予算などを考慮したうえで間取りを決め、図面に起こしていきます。

工事監理

設計図や仕様書どおりに工事が進められているかを確認する仕事です。

工事現場に立ち会い、鉄筋の配置や施工状況を確認し、必要に応じて是正を求めます。
工事監理は、建物の品質や安全性を確保するために欠かせない役割と言えるでしょう。

また、建築士は設計や工事監理のほか、建築確認申請などの行政手続きや、契約内容の確認といった事務業務も担います。

建築士の年収・働き方

建築士の年収は、勤務先の規模や働き方によって大きく異なります。
政府の統計データをもとにすると、「建築技術者」の平均年収は、会社規模によって次のような違いがあります。

100人～999人規模の会社

月給：約43.1万円／賞与：約137万円
年収：約640万円

10人～99人規模の会社

月給：約41.4万円／賞与：約86万円
年収：約583.8万円

このように、建築士の年収は勤めている企業や事務所の規模によって差が出やすいことがわかります。

参照元：賃金構造基本統計調査令和６年賃金構造基本統計調査一般労働者職種

建築士の働き方はさまざまです。

戸建てや集合住宅を手がける設計事務所のほか、工事を請け負うゼネコン、戸建て住宅を中心に設計・建設を行うハウスメーカー、地域密着型の工務店など、活躍の場は幅広くあります。

主な働き方の特徴は、次のとおりです。

設計事務所

個人のアトリエから大手事務所まで規模が幅広い
デザイン性の高い案件を手がけることが多い

ゼネコン（総合建設業）

大規模マンションや公共施設などを担当
設計から施工までを一貫して行うケースが多い

ハウスメーカー

戸建て住宅を中心に、設計・建設・施工を担当
業務が分業化されており、役割が明確

工務店

建設・施工を一括で対応する小規模企業
地域密着で、きめ細やかな対応がしやすい

働く場所によって仕事内容や求められる役割は異なります。
自分がどのような建物に関わり、どんな働き方をしたいのかを考えながら選ぶことが大切です。

建築家とは？建物をデザインするクリエイティブな仕事

ここでは、建築家の特徴や仕事内容についてまとめました。建築士との違いについても注目してみましょう。

建築家の特徴と役割

建築家とは、建物のデザインや空間作りを中心に、設計や監理などの建築業務を行う仕事です。
単に建物を建てるだけでなく、「どのような空間を作るか」「人がどう感じ、どう使うか」を重視する点が特徴です。

建築に関する専門知識をもとに、安全性や機能性を確保しながら、心地よさやデザイン性を追求。
そのため、建築家は建物の見た目やコンセプトづくりに深く関わる、クリエイティブな側面の強い仕事と言えるでしょう。

建築家の仕事内容（打ち合わせ・デザイン・監理）

打ち合わせ

個人・企業問わずクライアントと打ち合わせを行い、要望を丁寧にくみ取ります。
建物の用途や構造、デザインなどを確認しながら、どのような建物をつくるのかを具体化していく仕事です。

建物の設計・デザイン

クライアントへのヒアリングを通して要望をくみ取り、建物のコンセプトやデザインを考え、図面に落とし込む仕事です。

与えられた土地条件を踏まえ、建築基準法などの法令を守りながら、どのような建物が適しているかを設計します。
見た目の美しさだけでなく、安全性や使いやすさにも配慮することが求められます。

工事監理

設計図や仕様書どおりに工事が進められているかを確認する仕事です。
工事現場に立ち会い、鉄筋の数量や配置などを目視で確認するほか、施工記録や写真を通じて工事の状況をチェックします。

また、工事に付随して、建築確認申請などの行政手続きや、発注者と施工業者の契約内容の確認といった事務的な業務を行うこともあります。

建築家の年収・働き方

厚生労働省が公開している職業情報提供サイトによると、建築家全体の平均年収は約632.8万円です。

ただし、建築家の年収は一律ではなく、手がける建築物の種類や実績によって大きく異なります。
大規模施設や高い予算の建築プロジェクトを担当した場合、高収入につながるケースも。

また、経験や実績を重ねることで年収が上がる傾向もあり、独立開業か設計事務所への所属かといった働き方や、所属先の業績・給与体系によっても収入に差が生じるようです。

参照元： job tag

建築家も働き方はさまざま。大まかにわけて、以下の4とおりの就職先があります。

設計事務所

個人や企業の依頼を受け、建物のデザインや設計を行う
幅広い案件に関われ、将来的に独立を目指しやすい

建設会社（ゼネコン）

商業施設や公共施設など、大規模建築を担当する
設計から施工まで、スケールの大きな仕事に関われる

ハウスメーカー・工務店

住宅の設計や施工を中心に携わる
住まいづくりに深く関わりたい人に向いている

不動産会社

都市開発や建設企画など、街づくりに携わる
建物単体ではなく、都市全体の計画に関われる

設計士とは？建築士・建築家を支える「設計の専門職」

最後に、設計士について見ていきましょう。特徴や働き方などについてまとめました。

設計士の特徴と役割

設計士とは、建築士や建築家を支えながら、設計業務を専門に担う仕事です。
施主の要望をもとに、建物の企画や設計図の作成などを行い、理想の住まいや建物を具体的な形にしていきます。

設計士自身がすべての設計や工事監理を行うわけではありませんが、設計の現場に深く関わり、完成度を高める重要な役割を担っています。

設計士の仕事内容（図面作成・設計補助）

住宅の一部の図面作成や設計補助を行います。

建築士資格を持たない場合、設計できる建物には制限があるため、小規模な建築の設計を担当したり、建築士の補助として設計業務に関わったりします。

すべての設計や工事監理を行えるわけではありませんが、設計の現場に携わりながら経験を積み、将来的に建築士を目指す人も多い職種です。

設計士の年収・働き方

設計士の年収は、一般的に建築士よりもやや低い傾向があります。

建築士の資格を持たずに設計補助を担うケースが多く、資格の有無が収入に影響しやすい点が特徴です。

平均年収はおおよそ350万円前後とされ、企業規模が大きい場合でも400〜500万円程度が目安となります。
そのため、将来的に収入や業務範囲を広げたい場合は、建築士資格の取得を目指す人も少なくありません。

参照元：日建学院公式

設計士には、おもに2通りの働き方があります。

アトリエ事務所

特定の建築家のもとで、デザイン性の高い設計に携わる
外部の専門家と連携しながら業務を進めることが多い

ゼネコン

施工を見据えた、実現性の高い設計を担当する
コスト調整や設計変更など、幅広い業務に関わる

設計士も、どのような働き方をしたいのかを明確にしておくことが大切です。

建築士・建築家になるには？目指し方の違いを比較

もしお子さまが建築に興味を持っているなら、建築士や建築家という道を考えてみるのも一案です。
ここでは、ふたつの職業の目指し方を解説しながら、その違いにも注目していきます。

高校・大学・専門学校で学ぶこと

建築士や建築家を目指すには、建築の基礎知識やデザインの考え方を学ぶ必要があります。
おもな進路は高校・大学・専門学校で、それぞれ学べる内容や受験資格が異なります。

建築系学科のある高校では、二級建築士の受験資格を得られますが、一級建築士を目指す場合は、二級合格後に実務経験を積んでから受験する流れになります。

大学では、建築学部や理工系・美大の建築系学科などで指定科目を履修することで、実務経験なしで二級建築士や木造建築士の受験資格を取得できます。
構造や設備、設計演習など、建築を総合的に学べる点が特徴です。

専門学校や高等専門学校は、CADや建築CGなど実践的なカリキュラムが多く、専門分野を早く身につけたい人に向いています。

どの進路でも、建築に必要な基礎力を身につけることが可能です。

建築士を目指す進路

建築士になるまでの基本的な流れは、「建築を学ぶ→建築士試験に合格する→実務経験を積んで登録する」の3ステップです。

まずは高校や大学などで建築士指定科目を履修し、試験の受験資格を得ます。
2020年の法改正により、一級建築士は大学で指定科目を修めて卒業すれば、実務経験がなくても受験できるようになりました。

ただし、合格後に免許登録を行うには2年以上の実務経験が必要です。
そのため、一級建築士を目指す場合は、4年制大学の建築学科で体系的に学ぶ進路が効率的と言えるでしょう。

二級建築士や木造建築士も、建築系学科で指定科目を修めることで実務経験なしで受験できます。
ただし、高卒の場合は登録に2年以上、学歴がない場合は7年以上の実務経験が必要となります。

試験に合格し、登録を済ませることで、建築士として働く準備が整います。

建築家として活躍する方法

建築家として活躍するためには、学びと実務を通じて設計の経験と実績を積み重ねていくことが欠かせません。
一般的な流れは、「建築分野を学ぶ→設計の実務経験を積む→作品として実績を残す」というステップです。

まずは大学や専門学校などで建築を学び、設計やデザインの基礎を身につけます。
卒業後は、設計事務所やハウスメーカーなどに勤務し、図面作成や工事監理に携わりながら、実践的な設計力を養っていきます。

実務で関わった建物を作品としてまとめ、実績を重ねることで評価や信頼が高まるため、設計事務所でのキャリアアップや独立といった道も開けるでしょう。

資格と実務経験を軸にキャリアを築く建築士に対し、建築家は設計実績やデザイン力そのものが評価される点が大きな違いです。

建築の仕事から広がるキャリア

建築の仕事で身につけた知識や経験は、設計以外の分野でも幅広く活かすことができます。
ここでは、建築分野から広がる代表的なキャリアを紹介します。

建築の知識が活かせる仕事（施工管理・都市計画）

施工管理は、建築現場の監督役として、工事のスケジュールや品質、安全、コストなどを総合的に管理する仕事です。
住宅や商業施設の新築工事などで、設計内容を正確に理解する力や工事監理の経験が役立ちます。

都市計画は、土地利用や街づくりに関する大規模な計画を立案し、再開発や地域整備を進める仕事です。
たとえば、老朽化した駅周辺エリアの再開発では、住宅・商業施設・公共施設の配置を検討する際に、建築の知識や空間設計の視点が活かされます。

デザインにつながる仕事（インテリアデザイナー・プロダクトデザイナー）

建築で培った知識は、デザイン分野の仕事にも活かせます。
たとえば、インテリアデザイナーやプロダクトデザイナーが挙げられるでしょう。

インテリアデザイナーは、住宅や商業施設の空間づくりに携わり、家具や内装、照明などを含めたトータルなデザインを行います。
一方、プロダクトデザイナーは、椅子やテーブル、建材などの製品を設計する仕事です。

これらの仕事は、見た目の美しさだけでなく、荷重や耐久性、安全性といった視点も欠かせません。
建築で身につけた構造理解や素材に関する知識は、製品や空間の質を高めるうえで大きな強みとなります。

建築の学びが役立つ仕事（メーカー・行政・研究）

建築の知識は、メーカーや行政、研究分野でも幅広く活かすことが可能です。

建築系メーカーでは、建材や住宅設備の開発・改良に携わり、断熱性や省エネ性能を高める製品作りに、建築のスキルを活かせるでしょう。

行政では、建築確認や公共施設の建て替え・改修工事の監理、都市政策の立案などを通して、安全で暮らしやすい地域づくりを支えます。

また、研究職は、大学や研究機関で建築技術を深く研究。
その成果を論文や実務に活かしながら、建築分野の発展に長期的に貢献します。

小学生から広げたい建築への興味

ここでは、建築家や建築士に必要な能力や、その力を伸ばすために家庭でできる取り組みについてまとめました。
建築への興味を育む書籍も紹介しています。

空間把握力・観察力・好奇心

空間把握力や観察力、好奇心は、建築家にとって土台となる能力です。

空間把握力とは、部屋や建物の構造を頭の中で立体的にイメージする力。
設計図を描く際に寸法や配置を正しく把握できるため、正確な図面に仕上げられます。

観察力は、周囲の建物や自然をよく見て気づきを得る力で、色や素材の組み合わせを考える場面で役立つでしょう。

また、好奇心は「なぜこの形をしているのだろう」など、考える姿勢そのものです。
新しい設備やデザインなどへの興味が、トレンドを取り入れた住宅設計や空間づくりにつながります。

好奇心は、工場見学や直接体験などでも伸ばすことができます。以下の記事を参考にしてください。
直接体験で生きる力を身につけよう！体験が大切な理由とおすすめの体験を詳しく解説！
小学生にとって工場見学はいいことづくめ！参加しておきたい魅力満載の工場11選

家庭でできる取り組み

小学生のうちから建築への興味を育てるには、家庭で空間把握力や観察力、好奇心を楽しく伸ばせる取り組みが大切です。

たとえば、積み木やブロック遊びは、見えない部分を想像したり、別の角度から形を考えたりすることで、空間を立体的に捉える力を養えます。
折り紙やパズルも、形や全体像を意識しながら取り組むことで、立体感覚を育てる遊びです。

また、近所の家や橋などを観察し、スケッチしてみる「建物観察散策」もおすすめです。
親子で一緒に楽しむことで、空間把握力や好奇心が自然と伸びていくでしょう。

絵をうまく描くコツは、以下の記事で解説しています。観察力も磨かれますよ。
小学生が上手に絵を描くコツとは？親のサポートによって上達度は変わる！

お子さまの多彩な能力を育むには、ゲームやアプリもおすすめ！以下の記事で詳しく紹介しています。
【学年別】小学生の知育クリスマスプレゼント17選！楽しく選べるおもちゃガイド
 遊びながら学ぶゲームとは？小学生向け無料アプリ＆知育カードゲームおすすめ19選

建築の興味を広げるおすすめ書籍

『MONUMENTAL 世界のすごい建築』

世界各地の有名建築178件を、美しいイラストとデータで紹介する大型絵本です。
5大陸ごとに建物の位置や特徴を解説し、古代遺跡から高層ビルまで幅広く掲載。
イラスト中心で、小学生でも楽しく建築の魅力に触れられます。

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建築士と建築家の違いを知ると、さらに興味が広がる

建築士と建築家、設計士は、仕事の役割や働き方、資格の有無などに違いがあります。
しかし、いずれの仕事も、顧客やクライアントの理想を形にするという共通したやりがいを持つ、大切な仕事です。

もしお子さまが建築に興味を持っているなら、観察力や好奇心を大切に育てながら、お子さまに合った進路を一緒に考えていくとよいでしょう。

それぞれの仕事の違いを知ることで、将来の選択肢がより具体的に見えてくるかもしれません。
建築の世界への興味も、さらに広がっていくはずです。